どれだけこの日を待ったことか。AJICO以来、久々となるUAの来広。古くからのファンで、広島公演は欠かさず足を運んできたという編集部・ベイ子と、『turbo』、AJICO、『泥棒』の流れで、完璧に彼女の世界に引き込まれた僕は、当日の会議を強引に切り上げてタクシーを飛ばした。 「郵便貯金ホールまで、ぶっとばし系で。お願いです、運転手様…」 どちらかといえば時間にルーズ、ライブにも遅れがちな僕を、そこまで突き動かした(大げさだが)ものは何か? まず第1に、アルバム『泥棒』の仕上がりが素晴しかったから。この1枚については賛否両論を呼んでいるようだが、個人的には最高傑作だと思っている。「昔のUAが好き」という人に無理やり押し付ける気はないが、歌い手としての芯(UAの場合、独特の浮遊感)は、デビュー時から全くブレていないと思うし…。 第2に、バックバンドのメンバー。バンマス(バンドマスター=演奏の指揮をとる人物)のASA-CHANGをはじめ、キーボードにはお馴染み・朝本さん、エレクトリック・バイオリンにアヴァンギャルド番長・勝井さん(from.ROVO)。このメンツはヤバい! 物を書く立場の人間として「ヤバい」という安易な言葉は使いたくないが、それ以外の言葉を見つけられない。それぞれのメンバーが個々にライブを開催したとしても、僕は確実にお金を払って観に行くだろう。
やはりステージは『泥棒』からの選曲がメインとなった。ドラム、パーカッション、タブラ…と、持つ手を変えるASA-CHANGを主軸に名手たちが絡み合い、ジャジーな音世界を創造。“数え足りない夜の足音”をはじめ過去の名曲には大胆なアレンジが施され、間奏部分のブッ飛んだセッションはトランス的でもあった。その間に漂うUAといえば、水を得た魚の様で。フラフラ歩き回ったり、目を閉じてしゃがみこんだり、はにかんだ微笑みを見せたり…。生とか死とか、そんな意識までもを超えた美しさ。その佇まいは、花のよう。
また、舞台、照明の演出も特筆すべきものが。ステージ序盤は映像が投影され、スクリーンだとばかり思っていた1枚の白い布が、中盤以降、様々な姿に変化する。緻密なワイヤー操作で、バンド全体を繭の様に包み込んだり、山脈の様な隆起を見せたり。これは新作のジャケットを手掛けたクリエイターによる作品とのこと。巨大な布が創るドレープの美しさに、言葉を失った人も多いはすだ。
“閃光”で幕を閉じた束の間のショータイム。あらゆる分野のトップクリエイターが集い創造した夢の世界。もし、もう1度同じクオリティのステージを観れるなら、倍のチケット代を払ってもいい。これが僕の感想。メジャーという難しいフィールドに身を置きつつ、いつも本物だけを届けてくれるUA、そしてサポートメンバーとスタッフに心から感謝したい。こういう大人のステージが頻繁に開催されれば、広島の音楽レベルはもっと上がるはず。それは、とても嬉しいことだ。
感動を語り合いつつ、アストラムラインで帰社したベイ子と僕(帰りはタクシー代をケチった)。会社の机に座った途端、現実が待っていた…。 「でも、今日はこのままの気持ちでいたい。誰かとUAについて語りたい…」 溜まった仕事から逃げ出し、行き着いたとあるバーで素敵な出会いが! 何杯目かのグラスを空けた時、店の扉が開く。 「こんばんわぁ」 (Text by じゅん作)